2022/01/13
今回は、タバコの喫煙とお口の関係についてお話していきたいと思います。
最近では飲食店などでも分煙が進み、喫煙者は少し肩身が狭い思いをしているのではないでしょうか。
タバコを吸う人だけではなく、副流煙による周囲の人への受動喫煙の影響など、健康被害について関心度が高くなってきたことが原因と思われますが、
このタバコが身体に作用する点について歯科の観点から見ていきましょう。
食べ物を食べる、飲み物を飲むなど体内に物質を取り込む際、当たり前ですが口腔が一番初めに通過する器官となります。
タバコももちろんその流れに該当し、口腔は直接的・間接的なタバコの影響を初めに受けます。口腔内では口腔粘膜といわれる組織が広がっており、
この組織は特に物質の透過性が高いため粘膜上皮の下にある血管にすぐ吸収されてしまいます。
吸収されたニコチンは血管を収縮させ、血流量が少なくなることによって血管内のヘモグロビン量の減少・酸素飽和度の低下をもたらします。
この状態になると、歯周組織に炎症などがあった場合でも歯肉出血が少なくなり、歯周病などの早期発見の機会を逃してしまいます。
また、血管内に入ったニコチンは、体を守ってくれる好中球のウイルスなどを食べてくれる能力や化学走化性を低下させ、
マクロファージによる抗原提示機能も抑制されてしまいます。また、粘膜面での局所免疫に関与する免疫グロブリンA(IgA)、細菌やウイルス、
薬物に対して生体反応を示す免疫グロブリンG(IgG)の低下をもたらします。難しく書きましたが、要は体の免疫機能の反応や働きを鈍くする作用を及ぼしてしまうということです。
ここまでは能動喫煙の主な作用を書きましたが、ここから受動喫煙について少し触れてみます。一般的に、小児・胎児に対する受動喫煙は、深刻な影響を及ぼす可能性があります。
気管支喘息などの呼吸器疾患、中耳疾患、胎児の発育異常、乳幼児突然死症候群、小児の発育・発達と行動への影響、小児がん、
さらには、注意欠陥多動性障害(ADHD)などを引き起こす可能性が出てきます。
また、受動喫煙により、小児のう蝕(虫歯)や歯肉のメラニン色素沈着のリスクが高くなることが報告されています。
タバコはわかっていてもなかなか止められないという人もたくさんいるかと思います。
ご自身への影響はもちろんですが、ご家族(特にお子さんやお孫さん)への影響の大きさについて少しでも理解が深まり、大切な命を守っていくための禁煙が進んでくれたらなと思います。
もちろん禁煙は、ご自身の歯や体の健康を守ることにも繋がりますので、医科だけではなく歯科からも積極的におすすめしていきたいと思います。