2025/01/04
今回は、歯ぎしりと食物繊維の関係についてお話していきたいと思います。
2023年5月に、岡山大学とノートルダム清心女子大学の研究グループが、睡眠中の歯ぎしりと食物繊維摂取量の関係について発表していたのでそちらを紹介していきます。
(参照:睡眠中の歯ぎしりは食物繊維摂取量と関連している可能性を世界で初めて発見 – 国立大学法人 岡山大学)
歯ぎしりは、歯が欠ける・すり減るという問題はもちろんですが、歯周病の悪化や顎関節への過度な負担など、全身へ影響を及ぼしてしまう可能性がある行為です。また、歯ぎしりを緩和するためのマウスピースなどは存在しますが、歯ぎしり自体を減らす方法は発見されていないという背景から、今回の研究が活かされていけば根本から改善していく可能性も秘めているかと思います。
■研究内容
岡山大学とノートルダム清心女子食品栄養学科の学生を対象に口腔内診査と自己記入式質問票調査を行い、睡眠中の歯ぎしりの有無を調査した。また、歯ぎしりの有無は筋電計を用いて診断を行った。
■研究結果
食物繊維摂取量の上位25%と下位25%の学生を抽出して比較したところ、歯ぎしりをする学生は歯ぎしりをしない学生より食物繊維の摂取量が少ないという研究データが出た。また、傾向として食物繊維摂取量が少ないほど歯ぎしりをしやすいということも確認された。
今回は正式な論文ではなくPRESS RELEASEを基に紹介したため、調査人数などは記載がありませんでしたが、有意差が出たという調査結果は何かしらの原因解明に役立つのではないかと私自身も期待しています。
今回は食物繊維という栄養素に注目してきましたが、政府も推進している食育という観点から様々な食べ物を摂取し、栄養バランスのいい食事をするということは非常に大切なことです。
当院でも、上下の歯がしっかりと咬み合った状態で楽しく、おいしい食事を摂るという目的から矯正治療を検討して相談に来ていただく方も心なしか増えてきたように感じますが、食物繊維をたくさん採ることで、さまざまな問題の原因となる歯ぎしりが減り、なおかつ歯や身体が健康になっていくのは嬉しいことですね。
2024/12/25
今回は、マウスピース型矯正装置を使用して治療している最中に、虫歯になってしまった時の対処方法についてお話していきます。
一般的に、マウスピース型矯正装置は取り外してブラッシングができるため、虫歯になりにくいと思われがちかもしれません。これは個人差がありますが、半分正解・半分間違いではないかと思います。
先にも書いたように、マウスピース型矯正装置は取り外しが出来るため、固定式のブラケット・ワイヤーを使用する矯正治療よりブラッシングはしやすくなります。しかし、マウスピース型矯正装置のデメリットの一つとして、装置自体が歯に密着しており、唾液による自浄作用を受けにくくなるということです。
通常マウスピース型矯正装置は1日20時間以上の装着が必要とされており、もしブラッシングが不十分で汚れや菌が洗い流されないまま装置を装着してしまうと、虫歯菌の繁殖しやすい環境になってしまうのです。
では万が一、治療中に虫歯になってしまったらどうするのでしょうか。歯科医師による考えなどにも少し違いはあるので絶対とは言えませんが、よく言われている段階毎の対処法について説明していきます。
■C0からC1(軽度の虫歯)の場合
虫歯はC0からC4までの5段階で評価されており、数字が大きくなるほど重篤度が高くなっていきます。C0やC1という段階は、歯の一番外側にあるエナメル質という層に虫歯が出来ている段階のため比較的軽度と言えます。治療方法として少し表面を削ったり、フッ素による再石灰化を促したりする治療が中心のため歯の形は大きく変わりません。そのため、虫歯の治療とマウスピース型矯正装置を使用する矯正治療を並行して行うことが多いです。
■C2(中等度の虫歯)の場合
C2とは、エナメル質の下にある象牙質にまで虫歯が進行している状態のことを指します。虫歯の大きさなどによって異なりますが、一旦虫歯治療に専念していただくことが多いです。虫歯治療後に歯の形状が変わらなければ矯正治療をそのまま再開し、形状に変化があった場合は装置を作り直すこともあります。
■C3からC4(中等度から重度の虫歯)の場合
重度の虫歯の場合は、被せ物を作成したり、最悪の場合は抜歯なども考えられるため矯正治療は中断されます。抜歯などを伴う治療になる場合は、初めに立てた治療計画から大きく異なってしまうため、治療計画の見直しも必要になります。
この様に、虫歯の段階毎に治療方針が異なるということはお分かりいただけたのではないかと思います。ただ一般的に矯正治療中は定期的に通院していただき、お口の中をチェックしているため虫歯が出来たとしても重度まで進行するというケースはほとんどありません。
矯正治療に慣れてきた時が一番、ブラッシングなどのメンテナンスが不十分になりがちなので、定期的なメンテナンスの時にもチェックは行いますが、これを読んで少しドキッとした方は今一度しっかりとブラッシングを行うように心掛けてみてください。
2024/12/04
今回は、無歯症(むししょう)という症状についてお話していきたいと思います。
無歯症とは、その字の通りですが一部の歯が生えてこない状態のことを指しています。乳歯、永久歯両方に起こりえるのですが、発生機序は所説ありますがまだはっきりとした原因はわかっていません。ではこの無歯症についてもう少し詳しく説明していきます。
無歯症になりやすい歯としては、側切歯(一番前に歯から2番目の歯)や第一小臼歯(前から4本目の歯)、第三大臼歯(前から8番目の歯、親知らず)と言われています。第一大臼歯は乳歯の歯根も比較的しっかりしているので、乳歯が抜けずにそのまま残っているという人も中にはいますが、それ以外の部位については歯が生えていない状態になっていることが多いです。
では次に、無歯症のデメリットについてお話していきます。
イメージしやすいデメリットとしては、歯が抜けているのですきっ歯になってしまうということです。見た目や食べ物が隙間に挟まりやすいなどの影響が出てしまいます。
機能的なデメリットとしては、歯の本数が少ないことによって他の歯に掛かる力が増えてしまい、歯の破折などのリスクが高くなってしまいます。また、隙間が空いている状態だとその隙間に歯が倒れ込んでしまい、歯並びが悪くなってしまうこともあります。虫歯や歯周病のリスクが高くなってしまいますので、放置せずに治療の相談に来ていただくことをお勧めします。
無歯症の治療方法はいろいろと考えられます。ブリッジや入れ歯のような補綴処置、インプラントを埋入する外科的処置、矯正治療による処置など患者さんの症状やご希望によって選択することになります。
当院でも相談に来られる方はしばしばいらっしゃって、診査・診断を行うと歯列の乱れや不正咬合を併発している方が多いように感じます。そのため、そういった方には全体的な歯列のバランス、噛み合わせを改善するための矯正治療を案内するようにしています。ご自身の今ある歯でしっかりと噛むバランスを整えてあげることは、健康な歯を残すためにも非常に効果的な治療になるかと思います。また、稀なケースではありますが、無歯症で先天的に6歯以上欠損している場合は保険適用で矯正治療を行うことが可能なため、思い当たる方は一度相談してみることをお勧めします。
無歯症と聞いてピンとくる方とそうでない方は、はっきりと分かれるのではないかと思います。小中学校の歯科検診などで指摘されるケースが多いかと思いますが、ご自身やお子さんで思い当たることがあるなという方は一度しっかりとした検査をお勧めします。レントゲンやCTなどで今の状態をしっかりと把握したうえで、治療の要・不要をお伝えするようにしていますので、気になることと併せていろいろと質問していただけたらと思います。
2024/11/17
インプラント治療は、失った歯を人工歯根で補う治療法として近年注目されています。しかし、治療計画を立てずに進めてしまうと、インプラントが定着しなかったり、トラブルに繋がることもあります。
そこで、今回はインプラント治療前に矯正治療を行うメリットについて解説します。
①インプラント治療の成功率を高める
歯並びや咬み合わせが悪いままインプラント治療を行うと、以下のような問題が発生する可能性があります。
・噛み合わせの負担がインプラントに集中し、歯周病やインプラント破損のリスクが高まる
・インプラント周囲の骨や歯茎に負担がかかり、インプラントの喪失につながる
・審美的に不自然な仕上がりになる
一方、矯正治療で歯並びや咬み合わせを改善してからインプラント治療を行うことで、これらの問題を予防することができます。
②インプラント周囲の清掃を容易にする
歯並びが悪いと、歯ブラシが行き届かず、インプラント周囲炎などのトラブルが発生しやすくなります。矯正治療で歯並びを整えることで、清掃が容易になり、インプラントを長持ちさせることができます。
③残存歯の負担を軽減する
インプラント治療で失った歯を補うだけでなく、矯正治療で歯並びを整えることで、残存歯にかかる負担を軽減することができます。
④審美性を向上させる
歯並びや咬み合わせが改善されることで、より自然な美しい口元になります。
⑤将来の治療計画を立てやすくする
矯正治療で歯並びを整えることで、将来必要になるかもしれない他の歯科治療の選択肢を広げることができます。
■まとめ
インプラント治療前に矯正治療を行うことは、インプラント治療の成功率を高め、審美性を向上させ、将来の治療計画を立てやすくするなど、多くのメリットがあります。
インプラント治療を検討している方は、ぜひ矯正治療との併用についてもご検討ください。
2024/10/25
下顎後退症とは、下顎が本来の位置よりも後ろに位置している状態です。顎のラインが不明瞭になり、顔が小さく見える(顎のラインが見えないため、太ったようにも見えてしまう)一方で、呼吸困難、噛み合わせの悪化など様々な問題を引き起こす可能性があります。
■原因
下顎後退症の原因は、遺伝、骨格、アレルギーなどの環境要因などが複合的に絡み合っていると考えられています。
近年では、口呼吸が下顎後退症の一因となる可能性も指摘されています。口呼吸を習慣化してしまうと、顎の筋肉が弱くなり、下顎が後退しやすくなるのです。
■症状
下顎後退症の主な症状は以下の通りです。
・顎のラインが不明瞭
・顔が小さく見える
・口呼吸
・呼吸困難
・いびき
・睡眠時無呼吸症候群
・噛み合わせの悪化
・ガミースマイル
・顎関節症
・顔の左右非対称
これらの症状は、程度によって異なりますが、日常生活に支障をきたす場合もあります。特に噛み合わせの悪化に関しては過蓋咬合になりやすく、歯周病や顎関節症などにもつながるリスクが高くなります。
■治療法
下顎後退症の治療法は、症状の程度や原因によって異なりますが、いくつかの治療選択肢があります。
・矯正治療:軽度から中等度の症状であれば、矯正治療で歯並びや咬み合わせを改善することで、下顎の位置を前方に移動させることができます。
・外科手術:重度の症状や、矯正治療では改善が難しい場合は、外科手術で下顎骨を切断、移動させて位置を調整します。
・マウスピース:軽度から中等度の症状で、矯正治療に抵抗がある場合は、マウスピースを用いて下顎の位置を前方に移動させる治療法もあります。
■まとめ
下顎後退症は、見た目だけでなく、健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。気になる症状がある場合は、早めに歯科医院を受診し、適切な治療を受けることが大切です。