2018/03/14
矯正治療を受ける際に日本人の多くが
懸念する点として「治療中の見た目」があります。
不正咬合が気になって矯正治療を受けたいと考えても、
歯に装着されるブラケット(矯正装置)が気になって
矯正治療に踏み切れないという患者さんは多くいらっしゃるようです。
それに対して矯正治療器具も進化し、
白いブラケットや透明なブラケットなどが開発され、
だいぶ認知されてきました。
通常の金属のブラケットと比べて審美的に優れているため、
多くの矯正歯科医院でも採用され、
審美ブラケットで治療する人の方が圧倒的に多くなってきています。
白や透明のブラケットは、大きく2種類あります。
コンポジットと呼ばれるプラスチック素材をベースにしたものと、
ジルコニアやサファイア、セラミックなどを使用したものがあります。
また中にはセルフライゲーションと呼ばれるシャッター構造をもった
ブラケットもあります。
これはワイヤーを強く抑えないようにして、
弱い力で歯を動かしていくというものです。
セルフライゲーションブラケットは、
あの歯につける小さな粒の中に開閉機構を組み込んでいるため、
どうしても値段が高くなってしまう現状があります。
では裏側矯正(舌側矯正、リンガル)はどうでしょうか。
裏側矯正の治療において使用されるブラケットは通常金属で、
表側矯正と同じ材質のものも多く使われています。
なぜ材質が同じなのに、矯正治療費が高くなってしまうのでしょうか。
材質は同じですが、それでもブラケット自体の金額が高いのが現状だったりします。
中には厚みが1.5㎜程度しかなく、その薄さの中にワイヤーを通す溝、
結紮線をひっかけるフックなどがついています。表側と違い、
裏側での治療はさらに口腔内は狭く、
ブラケット自体作るのはとても高度な技術を要します。
そのため、同じ材質でありながら、材料自体の値段が上がってしまします。
裏側矯正の場合は、歯に直接ブラケットを装着することが基本的にできません。
ブラケットを歯につける位置というのは、
1㎜以下の世界で計算して接着していきます。
歯の裏側に関しては、直接われわれ矯正医が見て接着することが困難なため、
歯の模型をいったん作り、間接的に装着できるジグと呼ばれるものを作成して、
歯にブラケットを装着します。
このジグは患者さん個々の不正咬合、歯の状態が違うため、
すべてオーダーメイドで制作する必要があります。
この歯の模型、ジグを制作するのに費用がかかっていきます。
技術的な問題もあります。歯の表側での治療と裏側での治療は、
ワイヤーを通した際の力のかかり方が逆だったりします。
また、歯と歯の間の距離が近いため、少しの力でも歯はどんどん動いていきます。
そのため、表側以上に繊細に歯に力を加えていく必要があります。
裏側矯正治療を行っている矯正医は、
基本的に常に新しい情報と経験を学びに学会やセミナーなどで
より専門の勉強を続ける必要があるのです。
矯正治療を受ける選択肢の一つとして広がり始めている裏側矯正ですが、
上記のような理由から費用的には差が出てきます。
ただ、費用の問題以上に技術的な差が出やすい治療法でもあります。
表側、裏側とそれぞれのメリット、デメリット、
そして矯正の専門医の得意な治療をしっかりと確認して
治療方法を選択していっていただければと思います。