2020/11/09
歯を大切にしようということは、ほとんどすべての方が聞いたことがある話ではないでしょうか?
けれども、歯を大切にしないと将来入れ歯になってうまく食べられないという程度の認識の方も多いかもしれません。
今日は、歯を大切にするべき本当の理由を少し明確にしていきたいと思います。少し怖いお話になってしまうかもしれませんが、とても大切なことなのでご紹介いたします。
ここでも少し書いたことがありますが、歯のケアを怠ることで、虫歯になるだけでなく、歯周病にも大きく影響してきます。
そして、その歯周病は身体全体への悪影響につながることもどんどん分かってきています。
■認知症
実はごくごく最近、2020年10月5日に九州大学などの研究チームにより、
歯周病菌が体内に侵入することで、認知症の原因物質が脳に蓄積し、記憶障害が起きてしまうことが解明されました。
この実験では、マウスに歯周病の原因菌を3週間連続で投与し、
アルツハイマー型認知症を引き起こすたんぱく質であるアミロイドβが10倍に増加したというものです。
このアミロイドβは、ヒトにおいては脳の中で2~25年かけて溜まっていき、
認知症を進行させてしまう原因なので、まだアルツハイマーは根本的な治療法が確立されていませんが、この研究結果を逆に考えると、歯周病を防ぐことで認知症の発症リスクを下げたり、進行を遅らせることが出来ることを意味しているのではないでしょうか。
■そもそも歯周病って?
虫歯は歯自体を溶かすものですが、歯周病は歯茎を含めてダメージを与えてしまう病気です。
歯と歯茎の間の磨き残しがプラークとなり、そこに細菌が繁殖することで歯と歯茎の間の歯周ポケットを大きくし、歯の土台を溶かしてしまうことで、歯が抜けてしまうことにもつながります。実は45歳以降の歯を失う最大の原因は歯周病であることも注目しておきたい点です。
■歯周病が原因で全身のリスクに
今回の九州大学の研究結果発表以外でも、多くの健康に対する影響が報告されています。
歯周ポケットから細菌が血流に流れることでインスリンの働きを阻害し、糖尿病につながってしまったり、その糖尿病が悪化することで狭心症や心筋梗塞、そして細菌を含んだ唾液が気管に入ることによる誤嚥性肺炎なども報告されています。
今回は少し怖いお話となってしまいましたが、実は歯周病が全身への影響を与えることは20年以上前から指摘されてきていることです。
日本は世界的にも口腔ケアに関して意識が低いことが知られていて、しっかりとした情報が伝わっていないということが懸念されています。
矯正治療は歯並びを改善することで、日々の歯磨きをしやすくし、虫歯や歯周病リスクを下げることにつながりますが、矯正治療以前に、よりご自身の将来のリスクを考えて、毎日丁寧なブラッシングと、定期的なプロの口腔内ケアを続けていって頂ければと思います。