2018/05/11
矯正治療は咀嚼機能の改善を図ることにより
審美的な要素も改善することを目的とした治療です。
これまで書いてきました通り、叢生(デコボコ、乱ぐい歯)や
上顎前突、下顎前突など不正咬合の種類は様々で、その原因も様々です。
患者さん個々の不正咬合の状況を正確に検査し、
患者さん個々の治療計画を立てて治療していくのが矯正治療になります。
ただ、不正咬合の原因に目を向けていくと、
中には不正咬合にならないように予防することもできます。
例えば丁寧な歯磨きというのも不正咬合を防ぐ
大きな要素になっていることもあります。
今日はそんな不正咬合につながるだけでなく、
そもそも口の中の健康という観点から、
歯周病と喫煙に関して少し見ていこうと思います。
歯周病は実は「沈黙の病」とも呼ばれていることをご存知でしょうか?
それは自覚症状があまりないということから言われています。
特別痛みが激しくなることがなく、
歯周病が進行していることになかなか気づけないというものです。
しかし、一つその症状に気付くサインがあります。
それは「出血」です。
歯茎から少し出血する程度から始まるため、
一見見落としてしまったり、そのままにしてしまいがちなサインです。
この出血のサインが重要で、歯茎が炎症を起こし始めている証拠になります。
そのまま放っておくことで歯周病が進行し、
最終的に歯が抜けてしまったというケースは後を絶ちません。
歯が抜けてしまうことで隣接する歯が倒れこみ、
不正咬合へとつながる負の連鎖にはまっていきます。
そんな歯周病の小さなサインですが、
その小さなサインをさらに小さくしてしまうの原因の一つが喫煙です。
喫煙は血行を悪くするため、この出血が少なくなる可能性があります。
「沈黙の病」をさらに沈黙させてしまうリスクがあります。
一見不正咬合と歯周病、喫煙に関連性があるように見えませんが、
意外につながってきたりします。
不正咬合になってからの治療においては矯正治療で対応できますが、
その前に出来ることの一つとして口の中の健康を
考えるということもとても大切になります。
また矯正治療を受けた後、永く安定した噛み合わせと
歯並びを維持するというためにも大切なことになりますので
是非覚えておいていただければと思います。
2018/05/02
近年、矯正治療の方法は増えてきていて、
多くの患者さんが懸念される治療中の見た目の問題も解決されてきています。
多きく二つに分けると、歯の裏側に矯正装置を付ける
舌側矯正(裏側矯正、リンガル)と、
透明なカスタムメイド型マウスピース矯正(アソアライナーなど)装置です。
前者の舌側矯正は、治療中に見えないということから、
日本でもだいぶ広がってきた治療方法になりますが、
治療に対していくつか心配される点もあるのではないでしょうか。
今日は舌側矯正を受けるに当たり、よく問い合わせを頂く、
発音に関して注目していきたいと思います。
まず表側矯正にしても、裏側矯正にしてもブラケットを歯に装着するため、
何もないときと比べると必ず始めは違和感があります。
舌側は歯の裏側にブラケットがつくため、舌感が悪いというのは表側と違う点です。
発音に関しては、舌を使った音に関して多少の慣れが必要になります。
しかし、多くの舌側矯正治療を受けられる患者さんは、
想像以上にすぐ慣れるという感想を持っているようです。
というのも、舌側矯正のブラケットは、表側矯正と比べて小さく、
薄く作られているものがほとんどだからです。
患者さんによって慣れるまでの期間に多少のばらつきもありますが、
一度慣れてしまうと、ブラケットを取るまでの期間、
新たな装置に切り替えるというケースは稀なので、
ほとんどの患者さんが発音に関して違和感を感じていたことを忘れてしまうのが実際です。
実は矯正治療を行う理由の一つに「発音の改善」があります。
治療中の発音に関して一時の不慣れがあっても、
治療を終えると正確な音を発声することが出来るようになります。
最近では英語が身近になってきている方も多くなってきています。
特に英語の発音においては歯並びが重要で、叢生(凸凹、乱ぐい歯)や、
隙っ歯だと、thの発音なども難しくなるため、
矯正治療を受けられる患者さんが増えてきているのも事実です。
治療開始時の少しの違和感よりも、治療後長く綺麗な発音を
継続するために矯正治療を検討していただければと思います。
2018/04/18
矯正治療を行う前には必ず相談というステップと
検査というステップがあります。
■相談に関して
相談は患者さんの不正咬合に関して気になることや、
矯正歯科医院の治療方針などをお伝えするステップです。
患者さんからしてみて、気になることを明確にする一歩目といったところでしょうか。
多くの患者さんが不正咬合の状態と同じく気にされているのが、
痛み、治療期間、費用などです。
相談の段階では不正咬合の詳細が見えないため、
治療期間や費用に関して正確なお答えが難しいところでもあります。
■精密検査
治療を決断する前に行うのが精密検査で、
費用も発生してくる歯科医院がほとんどだと思います。
精密検査が必要な理由としては、患者さん個々の不正咬合の状態、原因が違うため、
それをしっかりと把握したうえで治療方針を話し合い、
治療開始していく必要があるためです。
レントゲンや場合によってはCTを使うこともありますが、
ここで通常の齲蝕(虫歯)治療と大きな差が出てきます。
通常の虫歯治療の場合は、虫歯になっている歯、
もしくはその周囲のレントゲンだけで現状を把握でき、
治療個所も虫歯になっている部分だけで済みます。
また保険の対象となるので、費用は抑えることが出来ます。
それに対して矯正治療の場合は、
例えば前歯だけ叢生(凸凹、乱杭歯)になっていたとしても、
奥歯の咬み合わせまでチェックする必要があります。
前歯の叢生の原因として、歯が綺麗に並ぶスペースがなく、
奥歯の位置を奥にずらすことでスペースを作ることもあります。
あるいは歯を外側に広げる治療を必要とすることもあります。
つまり、顎全体、歯列全体からの治療を必要とすることが
ほとんどということになります。
また保険対象外になるため、患者さんの負担が出てきてしまいます。
精密検査を行うことで、上下の咬み合わせを含めて明確にし、
不正咬合の原因を突き止めて初めて抜歯、非抜歯も明確になり、
治療期間、治療方針、そして治療費も明確になってきます。
実は歯を実際に動かしていく矯正治療自体の時間よりも、
初めの検査と診断が長く続く綺麗な歯並びを作るためにも、
とても大切なステップになります。
2018/03/14
矯正治療を受ける際に日本人の多くが
懸念する点として「治療中の見た目」があります。
不正咬合が気になって矯正治療を受けたいと考えても、
歯に装着されるブラケット(矯正装置)が気になって
矯正治療に踏み切れないという患者さんは多くいらっしゃるようです。
それに対して矯正治療器具も進化し、
白いブラケットや透明なブラケットなどが開発され、
だいぶ認知されてきました。
通常の金属のブラケットと比べて審美的に優れているため、
多くの矯正歯科医院でも採用され、
審美ブラケットで治療する人の方が圧倒的に多くなってきています。
白や透明のブラケットは、大きく2種類あります。
コンポジットと呼ばれるプラスチック素材をベースにしたものと、
ジルコニアやサファイア、セラミックなどを使用したものがあります。
また中にはセルフライゲーションと呼ばれるシャッター構造をもった
ブラケットもあります。
これはワイヤーを強く抑えないようにして、
弱い力で歯を動かしていくというものです。
セルフライゲーションブラケットは、
あの歯につける小さな粒の中に開閉機構を組み込んでいるため、
どうしても値段が高くなってしまう現状があります。
では裏側矯正(舌側矯正、リンガル)はどうでしょうか。
裏側矯正の治療において使用されるブラケットは通常金属で、
表側矯正と同じ材質のものも多く使われています。
なぜ材質が同じなのに、矯正治療費が高くなってしまうのでしょうか。
材質は同じですが、それでもブラケット自体の金額が高いのが現状だったりします。
中には厚みが1.5㎜程度しかなく、その薄さの中にワイヤーを通す溝、
結紮線をひっかけるフックなどがついています。表側と違い、
裏側での治療はさらに口腔内は狭く、
ブラケット自体作るのはとても高度な技術を要します。
そのため、同じ材質でありながら、材料自体の値段が上がってしまします。
裏側矯正の場合は、歯に直接ブラケットを装着することが基本的にできません。
ブラケットを歯につける位置というのは、
1㎜以下の世界で計算して接着していきます。
歯の裏側に関しては、直接われわれ矯正医が見て接着することが困難なため、
歯の模型をいったん作り、間接的に装着できるジグと呼ばれるものを作成して、
歯にブラケットを装着します。
このジグは患者さん個々の不正咬合、歯の状態が違うため、
すべてオーダーメイドで制作する必要があります。
この歯の模型、ジグを制作するのに費用がかかっていきます。
技術的な問題もあります。歯の表側での治療と裏側での治療は、
ワイヤーを通した際の力のかかり方が逆だったりします。
また、歯と歯の間の距離が近いため、少しの力でも歯はどんどん動いていきます。
そのため、表側以上に繊細に歯に力を加えていく必要があります。
裏側矯正治療を行っている矯正医は、
基本的に常に新しい情報と経験を学びに学会やセミナーなどで
より専門の勉強を続ける必要があるのです。
矯正治療を受ける選択肢の一つとして広がり始めている裏側矯正ですが、
上記のような理由から費用的には差が出てきます。
ただ、費用の問題以上に技術的な差が出やすい治療法でもあります。
表側、裏側とそれぞれのメリット、デメリット、
そして矯正の専門医の得意な治療をしっかりと確認して
治療方法を選択していっていただければと思います。
2018/03/09
矯正治療を始めるタイミングはそれぞれです。
また希望しているタイミングよりも様子をみて
永久歯列になってから始める方が良いケースなど、
患者さんによって変わってきます。
今日はそんな中から矯正治療経験者300名を対象に
インターネット調査会社が行った調査結果をご紹介いたします。
■治療したタイミングはどうでしたか?
・73.3%:もっと早くに治療したほうが良かったと思う
・23.7%:適切な時期に治療で来たと思う
・3%:もっと遅くに治療したほうが良かったと思う
治療開始のタイミングに関してのあくまで患者さん目線の回答なので、
医学的にベストなタイミングだったかどうかは考慮されていませんが、
多くの患者さんが治療後にもっと早く治療したかったと回答していることがわかります。
また治療後の変化の実感としては、
歯磨きがしやすくなった=67.7%、
食事で良く噛めるようになった=56.7%、
笑顔に自身が持てるようになった=61.7%、
コンプレックスが解消された=57.3%
などと、多くの方が治療結果に満足しているようです。
では逆に早く治療を受けられなかった理由は
どういったものが考えられるでしょうか。
■矯正治療を受けたいと思わなかった理由は何ですか?
1位:矯正装置の見た目 61.8%
2位:治療費 51.3%
3位:治療中の痛みが心配 34.2%
などとなっています。
1位の矯正装置の見た目に関してですが、
実は見えない裏側矯正(舌側矯正、リンガル)による
歯列矯正の認知度も関係してきているようです。
このページを読まれている方はほぼ100%裏側矯正治療を
ご存知かと思いますが、この調査では、
子供のころ裏側矯正を知っていた=5.3%、現在=63.0%となり、
一昔前はまだ認知されていなかったことがわかります。
裏側矯正は実は1970年代から開発され、
ここ10年くらいで日本では世界的にも進化してきた治療法だったりします。
横浜ひらの矯正歯科でももちろん裏側矯正治療を行うことはできます。
あとは始めに書いた通り、矯正治療を始めるタイミングは
患者さんによって違うということをしっかりと把握することが大切です。
確かに非抜歯の可能性が高くなる小児矯正ですが、
不正咬合の状態によってはすぐに治療しないで
顎の骨の成長を観察してから決めた方が良いこともあるということです。
患者さん個々にしっかりと検査し、
不正咬合の原因を把握したうえで治療計画と
治療方法を相談しながら進めていければと思っておりますので、
慌てずにご相談に来て頂ければと思います。